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新潟地方裁判所 昭和26年(行)10号 判決

原告 株式会社成機舍

被告 新潟県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告が別紙目録記載の不動産につき原告に対して賦課した不動産取得税額金三十五万円を金十五万四千九百三十円と変更する、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は昭和二十四年九月二十一日訴外安藤機器株式会社から別紙目録記載の不動産を買受けたところ、被告はこれに対し、その不動産取得税の課税標準たるべき価格を合計金三百五十万円と評価し、旧地方税法(昭和二十五年二月二十八日法律第二号により改正前の)第八十八条、第八十九条昭和二十三年八月二日新潟県条例第二十一号新潟県県税賦課徴収条例第十九条第百一条によりその不動産取得税額を右価格の百分の十である金三十五万円と定めて昭和二十五年八月二十二日原告に対してその旨の徴税令書を交付した。

二、原告はこれを不服として昭和二十五年九月四日被告に対して異議の申立をなしたところ被告は昭和二十六年三月三日これを棄却する旨の決定をなしその決定書は同日原告に送達された。

三、しかしながら原告は前記の様に訴外安藤機器株式会社から本件不動産を買受けると同時に、これに設備されてゐた電気の配線、伝導設備、畳、建具及び建物内にあつた金庫、事務用机、椅子、その他の機械器具等の動産をも含めてこれを買受けたのであつて、その代金を、別紙目録記載の土地は金三十五万四千百円、別紙目録記載の建物は金百十九万五千二百円、前記不動産は百八十六万七千三百円と約定したのである。従つて本件不動産の売買価格はわづかに右土地建物の代金の合計金百五十四万九千三百円にすぎないのみならず右売買当時の時価もやはりその程度に過ぎなかつたのである。されば被告が本件不動産取得税の課税標準たる別紙目録記載の不動産の価格を金三百五十万円と評価したのは誤りであり、税額をその百分の十である金三十五万円と定めたのは違法であつて、本件不動産取得税の税額は本件不動産の売買当時の時価である前記金百五十四万九千三百円にその税率百分の十を乗じた額である金十五万四千九百三十円と変更さるべきである。

とのべた。(立証省略)

被告指定代理人は主文と同趣旨の判決を求め、答弁として

(一)  原告主張の一、二、の事実はこれを認める。

原告主張の三、の事実中不動産取得税の税率が百分の十であることは認めるが、その余の事実はすべてこれを否認する。

(二)  原告と訴外安藤機器株式会社との間の本件不動産の売買価格は合計金三百六十一万六千六百円であつて、此の中には原告主張の如き動産は含まれてゐなかつたし、本件不動産の右売買当時の時価は諸般の事情を考慮すれば合計三百五十八万余円と評価するのが相当であつたから被告が本件不動産取得税の課税標準を三百五十万円と定めたのはむしろ低きに過ぎるものであり従つてその税額を金三十五万円と決定したことについては別に原告主張の如き違法はないのである。

とのべた。(立証省略)

三、理  由

原告が昭和二十四年九月二十一日訴外安藤機器株式会社から別紙目録記載の各不動産を買受けたこと、これに対し被告がその不動産取得税の課税標準たる価格を合計三百五十万円と評価し、原告主張の各法条に則り昭和二十五年八月二十二日原告に対してその十分の一である三十五万円の不動産取得税を賦課する旨の徴税令書を交付したこと、原告がこれを不服として同年九月四日被告に対して異議の申立をしたところ、被告において昭和二十六年三月三日これを棄却する決定をなしその決定書が同日原告に送達されたこと、はいずれも当事者間に争がない。

よつて原告が本件不動産を買受けた当時の時価はどの程度に評価するのが相当であるかにつき考察するに

一、成立に争ない乙第一、二号証及び証人今井春海(第一、二回)同小宮山利三、同小島栄七、同後明五郎作の各証言を綜合すると、原告は訴外安藤機器株式会社との間に本件不動産の売買契約を締結するに当り、別紙目録記載の土地建物の外に、その附近に在る農地二反七畝二十四歩及び右建物附属の電気の配線設備、若干の畳、建具ならびに右建物内に在つた金庫一個、若干の机、椅子、機械器具、二個の電話加入権などをも含めてこれを売買の対象となし、以上すべての物件を含めた売買価格を原告は三百五十万円、訴外会社は三百七十万円と主張して譲らなかつたので村松町長後明五郎作はその間の斡旋をなして原告が右金三百五十万円を支払う外に同町においてその差額金二十万を負担しこれを訴外会社に支払うこととして売買契約が成立したものであること、ところがその後右農地二反七畝二十四歩(八百三十四坪)は右売買以前に農地として国に買収されてゐることがわかつたので両者話合の上これを除外することとし原告において前記三百五十万円より坪百円の割合で計算したその代金八万三千四百円を差引いた金額を訴外会社に対して支払つたこと、別紙目録記載の建物に設備されてゐた前記の電気配線設備及び畳、建具等は右建物と附加して一体をなすものとしてこれと一括売買されたものであること、また右建物内に在つた前記の金庫や若干の机、椅子機械器具等の動産類は訴外安藤機器株式会において従前より使用してゐたそれらの物の内主要なものを既に他に売却した残りのものであつて取引上さして値打のあるものではなく、前記の二箇の電話加入権を加へてもその価格はせいぜい合計六万円位に過ぎなかつたことがいづれも認められる。されば右売買における別紙目録記載の不動産の取引価格は、訴外安藤機器株式会社が代金として受領した前記合計金三百七十万より、前記の農地の価格金八万三千四百円及び建物内にあつた前記動産ならびに電話加入権の価格合計金六万円を差引いた残額金三百五十五万余円であると云うべきである。(前記電気の配線設備及び畳、建具等は本件建物と附加して一体をなしたものとして一括売買されたこと前記の通りであるからその価格は本件不動産の価格中に含まるべきである。)

原告は本件売買においては前記建物附属の電気配線設備、畳、建具等ならびに右建物内の前記動産類は別紙目録記載の不動産と別個に取引の対象となし、その売買代金をも別個に約定したのであつて別紙目録記載の不動産の代金は合計金百五十四万九千三百円に過ぎなかつたと主張するが此の点に関する甲第二号証の一、二、甲第三ないし甲第八号証は、前記の各証拠に照して見ると原告が本件不動産について前記売買に因る所有権移転登記をなすため売主たる訴外会社と合意の上特に乙第一、二号証の売買契約書の外に作成したものであつて本件売買契約の真実の内容を記載したものではなく右乙第一、二号証記載の内容がその真実のものであることが窺はれるので原告の右主張事実を証すべき資料とはなし得ないのである。また此の点に関する証人服部又七の証言及び原告代表者野崎真治本人訊問(第一、二回)の結果は前記各証拠に照して措信し得ないのであつて他に前記認定の事実を覆へして原告の右主張事実を認めるに足る証拠はない。

二、次に

1  成立に争ない乙第五号証によれば別紙目録記載の不動産の昭和二十五年度における固定資産税の課税標準たる価格は三百七十八万二千五百円と決定されてゐる事実が認められ、

2  また証人小宮山利三、同今井春海(第一回)の証言によると訴外安藤機器株式会社は昭和二十四年六月頃本件土地建物を訴外佐々木五郎に対し代金五百五十万円で売渡すべき旨の売買契約をなしたが代金の支払が遅延したために右契約は解除せられた事実が認められる。

以上一、二、認定の各事実ならびに証人笠原正治の証言を綜合すると本件不動産の本件売買当時の時価は少くも三百五十万円以上であつたものと認めるのが相当である。

さすれば被告が本件不動産取得税の課税標準たる価格を金三百五十万円と定めたのは別に高額に過ぎることはないと云はなければならないから右課税標準たる価格の査定が高額すぎることを前提としてその税額をその主張の様に減ずべきことを求める原告の本訴請求は失当たるを免れない。

よつて原告の請求を棄却すべきものとし訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 松永信和)

(別表省略)

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